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2016.3/21~25 さらば時刻表 第二章 国際都市高山(後編)

 次の列車は特急ひだ7号で、指定席までとってあるから着席の心配はない。が、しかし、改札を抜けて一番乗り場に向かったとき、私は絶句した。まさか富山行きのひだ号に乗客の列ができているとは思わなかったのだ。堅気の衆が高山本線に乗る目的半分が下呂もう半分が高山とばかり思っていたから、高山から先に乗る乗客が多いなどとはとても想像できなかった。しかも、ここから乗る客が多いだけでなく、ここまで乗ってきた客の半分ほどは、席を立っていないではないか。

 私は列の最後尾付近にいたから、列車に入ったのは乗客の中でも最後の方だった。私と同時に車内へ入ろうとした欧米人と思しき外国人さんに、先に列車に入るよう順番を譲ったところ、会釈で返してくれた。欧米に会釈をする習慣はあっただろうかと、ふと思った。

 車内に入り、進行方向左側の窓側席、D席に向かった。するとやはり、隣のC席に客がいて、荷物の置き場に困ることになった。他の座席を見ると、やはりほとんど埋まっている。高山から富山まででこれほど混むというのは、日常茶飯事なのだろうか。

 列車が出発し、車内改札を待つ間に大変なことに気がついた。高山本線はひとえに北上する。従って左側座席というのは、昼下がりの西日を強烈に浴びる位置なのだ。それを読んで右側を指定しておけばよかった、と後悔する羽目になったから、以後の教訓としておく。

 C席に座ったのは中国人であった。通路を挟んで隣のB席にはその妻が座ったと見えた。欧米人といい、中国人といい、高山は国際都市であると改めて思う。そういえば昨年来た時も、古い町並で外国人を多数見かけた。

 列車内で中国人を見るとついつい、昨夏の四国で見たような訳のわからない行動をしている姿を想像して、どうしても落ち着かない。だが幸い、今回は眠りこけていたから災いは降りかからなかった。

 高山の次の飛騨古川で、高校卒業後間もないと見えた青年三人が、お土産をたくさん持って乗り込んできた。そのうち二人は並んで座席についたが、一人があぶれてしまった。結局その一人は、おばさん三人が座席を回転して、ボックス状にしたうちの一席に座ったようだ。

 その後車掌氏がやってきて、新しく指定を取ったのか、それとも間違った座席に座っていたのか知らないが、別の座席へと引っ越していった。その後おばさんたちがその青年について話している声が漏れてきた。
ずっと携帯触ってるから会話も何もないね
と言っている。身内にも、家の中でずっと携帯電話を夢中で触っているせいで会話を持ちかけようとしても気が引けてできない、という人がいるという話も聞こえてきた。携帯電話というのは、最近では当たり前になった多機能携帯電話のことである。そのおばさんたちは、青年が暇そうにしていれば話しかけようとしていたらしい。しかし青年がずっと携帯電話を操作して暇つぶしをしているせいで、とても話しかけられなかったようだ。何とも寂しい世の中になってしまったものだ。

 そして私も眠りに落ちた。歩き疲れ、食後、西日と眠たくなる条件は整った。加えて旅に出る前日の晩に急性中耳炎の兆候が現れ、痛みにしばらくうなされていたせいで、十分に疲れが取れていない。今こうして旅に出ているのも、その晩に飲んだイブプロフェンのおかげである。

 カーテンも閉めずに眠ったせいで、ひどく日焼けした。体中が熱い。隣に客がいると困る場合の一つで、隣の客が車窓を見たがる可能性があるから、うかつにカーテンを閉められない。さらに私は中国語がわからないから、余計にたちが悪い。

 結局私は、越中八尾駅のあたりまで眠り通した。昨晩の地下鉄でも自然と瞼が重みを増していったことが何度もあったから、一晩熟睡できないだけで相当体にとって負担になることがよくわかる。大学生はよくオールと称して夜更かしをするが、私の理解の度をはるかに超えている。

 その越中八尾を過ぎた頃、車窓右手に突如雪山が姿を現した。もはや説明不要の立山連峰である。先ほどのおばさんたちは、いつもよりよく見える、と言っている。このあたりの住民なのだろうか。

 立山連峰からは随分と離れているのにも関わらず、相当な迫力であった。左側座席に座っているのが何もかも恨めしい。右側に座っていれば迷わず写真を撮るのだが、そうもいかない。だが、さすがに「ワイドビュー」を冠するだけあって、反対側車窓もよく見える。窓が大きいだけでなく、車窓が見やすいように隅々までこだわった結果だろう。

 これが終わるともはや終点富山駅は目の前も同然だ。二分ほど遅れていたので、私は早めに降りる支度を整えた。次の列車は四分後に発車する。富山駅は広大だから、乗り継ぎ時間がかなり必要な場合も考えられた。

 結局最後も高音版のワイドビューチャイムは鳴らなかった。だがもうそれはどうでもよかった。今は次の列車にきちんと乗り継ぐことだけを考えていた。そんな私の意表を突く言葉を、聞き逃さなかった。

 これから私が乗り換える14:48発の北陸本線金沢行きは、降りたホームの「前方」の三番乗り場から発車するという。私は富山駅に関する全ての記憶を呼び起こしたが、そうした切り欠き型のホームは思い浮かばなかった。

 すると、おかしな光景が車窓から見えた。私が馴染んだ北陸本線の線路が、下の方に見えるではないか。そしてそのまま、特急ひだ7号は新幹線のホームのような、大きな屋根に覆われた高架式のホームに入線し、止まった。右側に、一段高い北陸新幹線のホームが見えた。

 なるほど、新幹線開業に合わせて、新しいホームを作ったらしい。そのホームが切り欠き型構造をしていたというわけだ。何はともあれ、降りて前方に歩くだけで次の列車に乗り換えられたのだから一安心した。金沢行きは第三セクター仕様に塗装された521系電車二両であった。
普通金沢行き富山駅

<<次回に続く>>
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こだま827号

Author:こだま827号
職業:大學生 醫學部醫學科
趣味:鉄道旅行、旅行記執筆、音楽、写真撮影、動画制作、醫學研究
好きな作家:宮脇俊三、笹沢左保、上野正彦
愛読書:JTB時刻表

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