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2016.3/21~25 さらば時刻表 第五章 富山ブラック再び(前編)

第五章 富山ブラック再び
 改札が始まると、私は改札氏にフリーきっぷを提示し、まずは高岡色の車内に荷物を置いた。そしてカメラを携えてその顔を撮影する。キハ40系というのは不思議な車両で、どんな塗装でも馴染んでしまう。なんといってもクリームと朱のツートンが一番好きだが、この高岡色の色合いも悪くない。
キハ40系高岡色城端駅

 念願の高岡色に会えて、もはや氷見線と城端線に思い残すことは何もない。清々しい気分で高岡駅の改札を出て、ホテルへと戻った。チェックアウトは朝十時までだから、城端まで往復してもまだ間に合う。だからホテルの部屋に衣類を放置して出かけたのである。ホテルの設備だけでなく、宿泊条件をも存分に活用することができた。

 さて、次は金沢へ向かう。新高岡から新幹線でもいいが、それよりも在来線で行く方が数分早く着く。今回はこの「数分」が肝要なのだ。第三セクター移管後はもう二度と乗らないだろうと思っていた北陸本線津幡~高岡間に、結局また乗ることになった。

 金沢行きを待つ乗客は多かった。区間列車があるおかげで富山~高岡間は本数が多いが、高岡~金沢間はさほど本数が多くない。一時間空くこともある。

 金沢行きは、懐かしいメロディとともに入線した。北陸の主要駅で、列車の入線に際して流れるこのメロディを聞くと、つい昨年、この高岡駅で雪を浴びながら国鉄色の485系を撮影したときのことを思い出す。そのときもこのメロディが流れていたのだ。私にとって、どうしても忘れられない駅メロの一つである。

 高岡~金沢間と言えば、やはり倶利伽羅駅を真っ先に想起する。以前はJR西日本仕様の駅名標を車内から撮ったが、今はもうあいの風とやま鉄道仕様のものに変わっている。せっかくなので撮影したかったが、車内が混雑している上に私は座っていたから、それは諦めた。混雑しているのは並行在来線が順調であるということを示しているのだから、今回に限っては悪い気はしなかった。いつまでも、伝統の北陸本線を守り抜いて欲しい。

 どの駅からも大勢乗り込んでくるから、金沢到着前にはもう朝の通勤電車のようになっていた。私は一刻も早く降りてホームを移りたいのだが、乗客の分厚い壁が立ちはだかる。満員電車で座席に座っていると、疲労度はましなのだが、降りづらいのが玉に瑕である。

 なぜ私がこうも急ぐのか。それは昨日、このところ特急サンダーバード号の混雑が激しいという情報を得ていたからである。新幹線開通による余波とも考えられるが、新幹線の有無とサンダーバード号の利用率に関係があるのだろうか。混雑のもとになっている乗客たちが京都や大阪まで行くのなら、まず関係はないだろう。新幹線がまだ通っていない加賀温泉や福井へ行く爲に、サンダーバード号に乗り継ぐという傾向かもしれない。

 これから私は敦賀へ向かうのだが、乗る予定の列車は10:56発の特急サンダーバード18号である。普通電車の金沢到着が10:43だから十三分接続である。もし新高岡から新幹線で来たとしたら、これより数分遅い。そしてこの数分の間に、自由席は私が乗ってきた普通電車の乗客に占拠される。普通電車の車内でも、キャリーバッグを持った旅支度の客を見たから、乗り継ぐ客はやはり多かっただろう。

 という思考過程があって、私は急いで特急サンダーバード18号が待つホームへ向かった。しかし、時すでに遅しというのはこういうときにぴったりの言葉である。自由席乗り場にはすでに乗客の列が出来ていた。こういう乗客の列というのは迫力があって、実際よりもずっと多くの人間が待っているように見える。この行列に恐れをなし、私はふと隣の乗り場の電車に目を移した。サンダーバード18号の八分前に出発する、特急しらさぎ58号米原行きである。進行方向前二両の自由席はがらがらであった。米原行きではやはり集客力がないのだろうか。だとしたら、サンダーバード号の客は福井や敦賀が目的ではないのだろう。ということは、サンダーバード号の乗客はやはり大阪や京都を目指す者たちであって、北陸新幹線とは関係ないように思えた。

 こちらのしらさぎ号の存在は知っていたが、何となくサンダーバード号に乗ってみたかった。しらさぎ号は北陸本線内での停車駅が多い傾向にあり、その点でもサンダーバード号の方が乗っていて気持ちがよさそうだ。しかし、がらがらの自由席に代えられるものはない。そういうわけで、結局しらさぎ号に乗り込んだ。敦賀までは一時間二十分ほどである。

 旅は三日目であるし、一日目と二日目の宿では七時間以上の睡眠は確保した。だからそれなりに疲れがとれているはずなのだが、やけに眠たい。北陸本線を悠々と特急で通過するその車窓を眺めるつもりでいたのに、いつしか瞼は閉じ、意識は虚無の彼方へ消え去っていた。

 それでも北陸トンネルをくぐった記憶は鮮明にある。これは1962年に開通した狭軌鉄道で日本一の長さ13870mを誇るトンネルである。10kmも続くとは、まさしく長大トンネルである。ちなみに狭軌に限らなければ、山陽新幹線の六甲トンネル日本一長い

 敦賀で下車し、しらさぎ号を見送った。すると、出発の際に定番のメロディが流れたことから、一つ思い立った。このすぐ後にサンダーバード号が追いついてくる。その入線に合わせて例の入線メロディが入るはずだから、録音したい。ついでに混雑具合を見極め、敦賀の時点でどれほどの乗客がいるのかという知見を得ておきたい。
ヨンダー顔西行敦賀駅

 敦賀に来ると、どうも関西に戻ってきた気がする。ここから西側はアーバンネットワークの223系225系が走るからに違いない。現実に引き戻されそうな気分だが、まだ旅は今日を入れて三日ある。焦ることはない。さて、サンダーバード号がやってきた。敦賀はまだ北陸だから、やはり入線メロディも北陸本線仕様であった。

 敦賀駅の外に一度出てみたかったからこそわざわざここまで引き返したのだが、大したことはなかった。調べておいた昼食の店に向かって商店街を歩いていくと、土産屋を発見した。福井名物羽二重餅とあるのを見て、以前大学の写真部で、東尋坊に撮影旅行に行った時のことを思い出した。東尋坊の売店でも羽二重餅は売っていて、確かに福井県名物である。羽二重餅でもいいかと思ったが、恐らく有名だろうから新規性というか、意外性がなくて面白くない。なにせ塾の土産にはいつしかセンスを求められているから、奇抜すぎず、ありきたりすぎずの境界をうまく狙わなければならない。この時点で荷物が増えるのも嫌だから、とりあえず土産屋は冷やかしだけで立ち去った。

<<後編に続く>>
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プロフィール

こだま827号

Author:こだま827号
職業:大學生 醫學部醫學科
趣味:鉄道旅行、旅行記執筆、音楽、写真撮影、動画制作、醫學研究
好きな作家:宮脇俊三、笹沢左保、上野正彦
愛読書:JTB時刻表

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